THANK YOU FOR LOVING ME


 日の曜日が待ちどうしい!!
 普段は”新宇宙の女王”として、宇宙を救うために日夜、補佐官レイチェルと共に、職務に終われている。
 そのご褒美が、日の曜日だと彼女は思う。
 誰にも内緒で、愛する人と共に過ごせるのだから。
 今日も、まるで子犬のように”約束の地”を、アンジェリークは駆け上がる。
 緑の大樹の下には、銀の髪をした愛しい人が待っている。
「アリオス!!!」
「よお」
 何度も手を振ると、アリオスは軽く答えてくれる。
「ゴ〜ル!!」
 アリオスの胸にそのまま飛び込むと、彼はそのまま受け止めてくれた。
「おまえ…、最近、大胆になったな?」
 軽く喉を鳴らしながら意地悪げに笑う彼は、クラクラするほど素敵で、アンジェリークの心をとろけさせる。
「…だって…、こうしないとアリオスがどこかにいってしまうような気がして」
 彼女は、少し頬を上気させて、うっとりと彼を見つめた。
「----約束したじゃねーか、もう、おまえをおいてどこにも行かないと…」
「うん・・・」
「アンジェ?」
 そのままアリオスの胸に倒れこむようにも垂れ、彼はアンジェリークの体の異変に気がついた。
「----おまえ…、疲れてるんじゃねーのか? 最近、休んでねーだろ?」
 彼の低いよく通る声は、彼女の身も心も癒すように降りてくる。
「ん・・・。だけど、エレミアの為に頑張らなくっちゃ!」
「だったら、今日ぐらいゆっくり休んで、充電すればいいじゃねえか。俺とはまたいつでも逢えるんだからよ」
「イヤ!!」
 アリオスの言葉を取るように、アンジェリークはきっぱりと否定した。
 彼女は、彼の広い背中に腕を回し、しがみつく。
 左右の色の違う不思議な瞳に、甘やかな微笑を滲ませ、彼は愛しげに彼女の栗色の髪を撫でてやった。
「しょーがねーな。今日はここでゆっくり休むか? それとも俺の宿屋で…」
「ここがいいの! …バカ…」
「クッ、はいはい、お姫様」
 アンジェリークを抱きしめたまま、アリオスは一緒に屈ませ、そのまま気の根元へと落ち着かせた。
「ほら、寝るんなら、ここに枕があるからよ」
 からかうような微笑をニヤリと浮かべて、彼は当然のごとく自分の膝を指差す。
「もう…」
 すっかり顔を赤らめてしまい、アンジェリークは俯いてしまう。
 そんな彼女が可愛くて、アリオスはどんどんからかってしまうのだ。
「ほら、遠慮なく枕を使えよ?」
「え…、きゃっ!!」
 彼に手首を掴まれて、そのまま彼の膝に彼女は寝かされる。
「アリオス〜」
 上目使いに彼を睨みながら、はにかんだ表情を浮かべている。
 それが可愛くて堪らなくて、アリオスは軽く彼女に口づけた。
 触れるだけの優しいキス。
「ここにいるのは俺たちだけだ…。今のキスは、俺たちだけの世界の鍵だ」
 溢れる愛に滲んだ瞳を向けられると、泣けてくるのは何故だろう。
「ん…、大好きだからね、アリオス・・・」
「判ってる」
 アンジェリークは、アリオスの繊細な指先で優しく髪を梳かれて、思わず瞳を閉じる。
 幸せで、胸の奥が甘く疼くのがわかる。
 彼と再会して、これほどの幸せな時間が訪れるなんて、夢のようだと、彼女は思う。
「ふふ、前は逆だったけどこんなことがあったわね? お花畑で、私があなたを膝枕をして…」
「そうだな」
「あの時も、とっても幸せだった…」
 ゆっくりとアンジェリークは瞳を開けて、潤んだ瞳でアリオスをまっすぐ見つめる。
 温かな眼差しをアリオスは向け、再び優しい口づけで彼女の唇を塞ぐ。
「アリオス…」
 再び唇が離れ、彼女は切なそうにアリオスを見た。
「クッ、足りねェのか?」
 ニヤリと笑う彼のよくない笑顔に、アンジェリークは頬を上気させて、慌てて首を振る。
「アリオス…、私ね…」
「ん?」
「----エレミアを愛しているということもあるけれども、私が頑張れるのは、あなたがいるからなのよ…」
「アンジェ…」
 アンジェリークは柔らかい穏やかな笑みを浮かべると、そっとアリオスの頬に小さな手を伸ばしてゆく。
「あなたが、私を見守ってくれるから、私は頑張れる。あなたが私を愛してくれるから、どんな困難でも立ち向かえるのよ…。何度、有難うといっても、きっと足りない…」
「アンジェ…」
 彼の天使の言葉は、何時でも彼の心の一番奥にまで光を投げかけてくれる。
「----それなら、俺も同じだ」
 自分の頬に置かれる小さく可愛らしい手を、彼は自分のそれで包み込み、愛しげに彼女を見つめる。
「アリオス…」
「俺こそおまえには感謝してる」
「え?」
「おまえは、俺が記憶を無くしている間も、俺の目になって、物事を見せてくれた。息が出来なくて、苦しく、もがいてるときにも、おまえは俺の唇を開いてくれた」
 アリオスはそっと彼女の手を唇に持ってゆき、口づける。
「ここに来て、俺は何をすべきか考えていた…。そして気がついたんだ}
「何?」
「----おまえが俺の”夢”だということを・・・。おまえが道をくれた…」
 アンジェリークは嬉しくて堪らなくて、大きな瞳から大粒の涙をこぼす。
 深く艶やかな微笑が彼の瞳から溢れ出し、彼女の瞳を覗き込んでいる。
「知ってたか? おまえの瞳を通して見る空は、とても綺麗で蒼いことを」
「アリオス」
「隣で寝転んでいいか?」
「うん…」
 彼は優しく彼女の頭を膝から降ろし、そっと叢に乗せてやる。
 彼女の横に体を横たえると、そのまま寝返りを打つようにして、彼女の体を組み敷くような格好になる。
「アリオス…」
 アンジェリークは、この姿勢が恥ずかしくて、でも心の底では嬉しくて、複雑な想いに戸惑っている。
「アンジェ・・、おまえは、何時だって俺を助けてくれる・・・」
「あなたもよ、アリオス」
「----こんな言葉しかやれないが…、”俺を愛してくれて、有難う…”」
 二人の唇がゆっくり重ねられる。
 深く激しく。
 互いの情熱で、互いの心を満たしてゆく。
 爽やかに吹く風が木の梢を揺らし、柔らかな日差しが恋人たちに降り注ぐ。
 そっと、優しく。
 穏やかな午後のひと時が、まるで彼らのためにあるかのように、そっと見守っていた----
 
 ANGELIQUE THANK YOU FOR LOVING ME.     


コメント
今まで、少し疎かにしていたSIDE部屋での久々の創作のUPです。
この作品は、私が、それこそ中学生の頃から好きなBON JOVIの「THANK YOU FOR LOVING ME」からインスパイアされたものです。
「どんな困難なときでも愛してくれて有難う」という内容の曲で、アリオスにハマルな〜と思って、この曲をBGMに頑張ってみました。